原告敗訴の東京地裁不当判決(2009年9月10日)、そして直後の控訴から2年1ヶ月が過ぎました(地裁判決までの経過は下記「コトパンジャン・裁判とは(提訴から地裁判決まで)」を参照ください)。インドネシア現地の住民原告、コトパンジャン・ダム裁判弁護団、支援する会は、この間、控訴審に向けた準備を進めてきました。こうした控訴審の状況を数回に分けてお知らせします。
2011年5月31日、控訴審第1回進行協議が開催されました。進行協議というのは、民事訴訟規則95条以下に根拠がある口頭弁論(いわゆる法廷での普通の裁判)以外で、事件の争点整理、争点と証拠の関係など、裁判上必要な問題について裁判官が当事者双方を呼んで、事前に整理するという手続きです。コトパンジャン・ダム裁判のように、争点がたくさんあり、証拠もたくさんある裁判では、法廷での裁判だけではなかなか整理ができないので、このような進行協議が行われます。
さて、この進行協議の前日(5月30日)に控訴人(原告)は、480ページにも及ぶ控訴理由書(訴状)を提出しました。これは、第1審(東京地裁判決)の内容を分析・批判し、控訴人(原告)の主張を補足するための書面です。その主な内容は、@ダム建設事業に融資したJBIC(現JICA)自らが実施したSAPS(援助効果促進調査)中間報告書に記載された住民被害を徹底的に明らかにすること−地裁判決はダム被害があったことすら認めていないのでこれをまず認定させる。A地裁判決が認定した「SAPS調査は委託したインドネシアのNGOが行ったものでJBICはこれを認めていない」との被告JBICの主張を覆す新証拠(SAPS起案書)−これには、日本側が融資するにあたり同意する条件に住民への補償が確実に行われることなどが明記されている、つまりダム被害はインドネシアだけの責任ではなく、日本側の責任でもある−の提出B地裁判決が重視した「住民被害は軽微であり、その後治癒されている」としたカリミ・アンダラス大学教授、中山・東京大学教授らの報告書に信用性がなく、後年、同じ人物から「ダム被害が回復されていない」ことが報告されていることCダム監理を行った被控訴人(被告)東電設計に、住民被害を防止するコンサルタントとしての「専門家責任」があることD移転地住居の屋根に使用されたアスベストの分析結果などです。
現在、この控訴理由書について被控訴人から質問・疑義が上申され、これに対して控訴人(当方)が説明しているところで、被控訴人らは11月末までに反論を提出します。これを踏まえて12月15日に第3回目の進行協議が持たれます。控訴人弁護団は、すべてを進行協議で進めてしまうと控訴人住民らに手続きが見えないことから、法廷での弁論(公開)とそこでの控訴人本人の意見陳述を裁判所に求めています。12月15日の進行協議でこれが認められると来年2月くらいの開催が見込まれます。ぜひご参加ください。
控訴理由書は、コトパンジャン・ダムのケースを通じて、日本のODAの仕組みと真の姿を浮き彫りにしています。次回以降これを詳しく解説していきます。
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Last Update : 2023/1/15
Since : 2002/8/3
日本で初めてのODAを問う裁判
日本のODA(政府開発援助)によるコトパンジャン・ダム建設で、インドネシア・スマトラ島では23,000人がふるさとを強制的に奪われました。5,396人の現地住民が原状復帰と補償を求め、日本政府・JICA(国際協力機構)・東電設計(=東京電力グループ)を被告として、裁判中です。
日本政府はODAの基本理念を「開かれた国益の増進」としています。「援助」とは名ばかりです。「国益」=グローバル大企業の利益のために、地元住民を犠牲にした「海外版ムダな公共事業」を行い、さらには原発までODAを利用して輸出しようとしているのです。
「国益」のための「援助」、住民泣かせの「援助」はやめさせましょう。ぜひ、裁判にご支援お願いします。
(ダムの呼称について)
インドネシア・スマトラ島の住民・自治体・マスコミは『コトパンジャン(Kotopanjang)』と言います。
一方、日本政府・インドネシア政府は本件ダムを『コタパンジャン(Kotapanjang)』としています。
Kotoは地元ミナンカバウ語、Kotaはジャワ語でいずれも「町」を意味します。現地の言葉・文化を尊重する立場から、私達は『コトパンジャン・ダム』としています。