〜東京高裁の訴訟救助申立却下に満腔の怒り〜
3月14日、東京高裁はコトパンジャン住民5609人による訴訟救助申立を却下し、7日以内に6814万6415円の上告申立手数料を支払うよう命令した。
■ 「勝訴の見込みがない」とする東京高裁の判断
理由は「民事訴訟法82条1項所定の救助付与の要件」(裁判費用を支払う資力がないか、支払いにより生活に著しい支障が生じる者で、勝訴の見込みがあるときに限ると規定されている)を満たしていないということである。決定の文面からは、住民たちが生活に困窮していないと判断したのか、それとも勝訴の見込みがないと判断したのか(または両方か)が明らかではない。しかし、訴訟救助が認められた1審2審と同様、住民たちが生活に困窮しているという各村の村長による証明書が提出されているので、「勝訴の見込みがない」と判断したものだと思われる。
■ 国際的に「恥ずかしい」東京高裁の決定を糾弾
この決定を下したのは、事実認定すら行わず全てを「インドネシアの国内問題」だと切って捨てる地裁判決を追認した東京高裁第17民事部である。苦しい生活に耐えながら、10年をこえる長期の裁判を闘ってきた住民たちに対して、国際的に「恥ずかしい」(ムヌール弁護士)判決を下しながら、「上告しても無駄だ」と言わんばかりのこの決定について、満腔の怒りをこめて糾弾する。
■ 訴訟継続のために現地へ
きわめて不当な裁判制度であるが、一人当たり日本円で約1万2000円を支払わなければ裁判が終結する。弁護団はこのような現実を踏まえて、訴訟を継続するためには手数料を捻出可能な範囲に抑える必要があると判断した。そして納付期限(当初は3月21日であったが、4月15日まで延長)が迫る中、上告を希望する住民たちとこの問題を協議するため、急遽現地に代表が派遣されたのである。
■ 住民闘争協議会は闘い継続を全員一致で決定
代表たちは3月19日の夜遅く現地に到着し、ただちに上告する住民全体を代表する「コトパンジャン・ダム被害者住民闘争協議会」の役員たちとムシャワラ(会議)を開催した(詳細は『現地説明の報告』参照)。深夜にわたる討議の結果、請求額を1人1万円(手数料は1人当たり約70円=7000ルピア)に変更し、最後までみんなで一緒に闘うという方針が全員一致で決定されたのである。日本の「支援する会」は、とりあえず必要な手数料を立替え、貧困のため7000ルピアすら出すのが難しい多数の住民たちを支えるため、必要なカンパを募っていくことを約束した。
■ 6月上旬までが上告実現の山場
このような現地での合意に基づき、弁護団は4月12日に総額41万2千円(ワルヒ分を含む)の手数料を納付した。そして、4月15日に裁判所から「上告提起通知書」(ワルヒ分)と「上告受理申立て通知書」(住民分)が送付されてきた。このように通知が2種類になっているのは、ワルヒに関する上告が憲法違反を理由とするのに対して、住民たちは判例違反や「法解釈に関する重要な事項を含む」場合という「裁量上告」制度に基づき上告受理を申し立てているからである。いずれも通知から50日以内に「理由書」を作成し、高裁(最高裁ではない)に提出しなければならない。しかし上告受理については認められた前例がほとんどなく、場合によれば理由書の提出からわずかな期間で決定が行われる可能性が高いということだ。したがって、理由書提出期限の6月上旬までが、上告を実現するための最大の山場である。
■ 40万円カンパと公正判決要求署名に全力で取り組もう
この期間に全国各地で開催されるメーデーや反原発などのさまざまな集会や、「支援する会」独自の写真展などで、手数料負担が困難な住民を支援する40万円カンパと公正判決要求署名運動に全力で取り組もう。その運動の力で上告受理の扉をこじ開けていこう。
【カンパの振込先】
・郵便振替口座 00950−3−61768
・名義 コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会
・上告カンパと明記してください