福島原発事故は収束にほど遠く放射能汚染も拡大の一途では、原発推進勢力も国内での原発新増設は容易に口に出せない。そんな状況の中で、原発輸出再開への動きが大きな焦点となっている。
野田首相は9月22日、米ニューヨークで開かれた「原子力安全及び核セキュリティーに関する国連ハイレベル会合」で演説。福島第1原発事故をもとに「原子力発電の安全性を最高水準に高める」と強調し、「原子力の利用を模索する国々の関心に応える」と原発輸出を継続する姿勢を表明した。
野田は首相就任前に「短兵急に原発輸出を止めるべきではない。震災後の日本だからこそできる新しい国際貢献だ」(文芸春秋9月号「わが政権構想」)とはっきり語っていた。野田内閣は今、国際舞台で原発輸出推進を鮮明にしたのである。
すでに政府は事故直後の3月31日、ヨルダンへの原発輸出を民主・自民・公明3党で参議院可決。8月5日には「諸外国が我が国の原子力技術を活用したいと希望する場合には、世界最高水準の安全性を有するものを提供していくべきだ」と閣議決定し、既成事実を重ねている。
原発グローバル企業は、海外に活路を見出そうとしている。「2014年に受注を倍増させる」(三菱重工社長、9/8東京新聞)と、国内がダメなら海外へとの狙いをあらわにしている。国内で安全でないものがどうして海外ならば安全といえるのか。海外ならば事故が起こっても関係ない―まさに儲けのためには人命も環境もかえりみないグローバル資本の姿だ。
この原発輸出の大きなターゲットがインドネシアだ。7月30日に開催された「原発輸出をやめよ!ODA(政府開発援助)を問う国際連帯シンポジウム」におけるWALHI(インドネシア環境フォーラム)の報告から見てみよう。
インドネシアでは、同国初の原発として、スマトラ島の東に位置するバンカ島とブリトン島にタンジュンケラサック原発とムントック原発を建設する計画がある。ジャワ、スマトラ、カリマンタン各島に、そしてシンガポールにも電力を供給しようという計画だ。
天然ガスや石油などエネルギー資源が豊富なインドネシアに、なぜ原発なのか。
インドネシアは、ODAに伴う負債が重くのしかかり、国家予算の約半分を借金の返済に充てざるをえない。主な返済先は日本だ。インドネシアではいまだ
33%の地域に電気が通っていないが、産出したエネルギー資源は国内で活用できず、輸出して外貨を稼ぎ借金返済にまわさなくてはならない。つまり、自国の天然ガスは主要輸出先の日本に送る→電気が足りない→原発が必要だ→原発は日本が用意しましょう、というでたらめな構造となっている。
バンカ島原発のF/S(フィージビリティスタディ=実現可能性調査)には日本原子力発電(株)が入札している。東京電力・関西電力など電力9社が出資して設立され、敦賀原発や東海第2原発を建設した会社である。
インドネシア原子力庁は、「原発は安くて安全」とうその宣伝をしてきた。福島事故後の現在に至っても「稼働から40年以上経つ福島第1原発と違い、最新の安全性能を備えた原発になるので、安全性は十分に確保できる」と建設推進の姿勢をあらためようとしていない。建設候補地の住民にほとんど情報を伝えず、子どもたちに奨学金をばらまくなど、情報統制と金の力で原発建設を進める手口は日本と同じだ。
インドネシアは日本以上の地震大国である。2004年のスマトラ沖大地震では、東日本大地震よりも巨大な揺れと津波が襲い、史上最大級の被害がもたらされた。同年には、バンカ島から約140キロの場所でマグニチュード7・3の地震も発生している。そこに原発を建設するなど許されるわけがない。
シンポジウムでベリーWALHI委員長は「世界中で建設されようとしている原発をすべて止めなければならない。そのために私たちは世界中の人々と手をつないでいかなければならない」と語った。この声に応え、連帯して野田内閣の原発輸出策動を止めなければならない。
(2011年10月7日)
〒162-0815
東京都新宿区筑土八幡町2-21-301
TEL/FAX 050-3682-0769
(IP電話に変更しました)
www.kotopan.jp, info@kotopan.jp
ボランティアスタッフ募集中です。お気軽にご連絡ください。
Last Update : 2014/1/18
Since : 2002/8/3
Access Counter :
日本で初めてのODAを問う裁判
日本のODA(政府開発援助)によるコトパンジャン・ダム建設で、インドネシア・スマトラ島では23,000人がふるさとを強制的に奪われました。5,396人の現地住民が原状復帰と補償を求め、日本政府・JICA(国際協力機構)・東電設計(=東京電力グループ)を被告として、裁判中です。
日本政府はODAの基本理念を「開かれた国益の増進」としています。「援助」とは名ばかりです。「国益」=グローバル大企業の利益のために、地元住民を犠牲にした「海外版ムダな公共事業」を行い、さらには原発までODAを利用して輸出しようとしているのです。
「国益」のための「援助」、住民泣かせの「援助」はやめさせましょう。ぜひ、裁判にご支援お願いします。
(ダムの呼称について)
インドネシア・スマトラ島の住民・自治体・マスコミは『コトパンジャン(Kotopanjang)』と言います。
一方、日本政府・インドネシア政府は本件ダムを『コタパンジャン(Kotapanjang)』としています。
Kotoは地元ミナンカバウ語、Kotaはジャワ語でいずれも「町」を意味します。現地の言葉・文化を尊重する立場から、私達は『コトパンジャン・ダム』としています。