安倍首相は2013年4月30日から5月3日にかけて、サウジアラビア・UAE(アラブ首長国連邦)・トルコを訪問した。トルコとUAEでは原発輸出に必要な原子力協定の署名、サウジに対しても同協定を提案し協議開始が決まった。この中東訪問には、経団連の米倉弘昌会長、原発輸出の融資を行う国際協力銀行(JBIC)の奥田碩総裁、原発受注を目指す三菱重工の宮永俊一社長、東芝の佐々木則夫社長ら、100名を超える財界の幹部らが参加している。まさに原発輸出のための中東訪問だ。
トルコに対しては、三菱重工業とフランスのアレバの企業連合が原発4基の建設受注をすることが確実になった。総事業費220億ドル(約2兆円)になるという。
安倍首相は、トルコの首都アンカラにおける記者会見で、過酷な事故を経験したから安全技術が高まったとして、原発輸出のトップセールを誇らしげに報告。まさに「反省なき原発輸出行脚」(5/4付け東京新聞)だ。
安倍政権は、3月に「経協インフラ戦略会議」(海外経済協力・インフラ輸出・資源獲得に関する閣僚会議)を発足させた。第1回会議で安倍首相は、「最先端のインフラシステム輸出を後押しすることは三本の矢の一つである成長戦略の重要な柱」と強調した。その具体化が今回の中東への原発輸出にほかならない。
福島原発事故がいまだに問題を発生させている中で国内での原発建設はできない。そこで輸出に力点を移している。それは、原発技術の維持確保のためでもある。「メーカーが長年にわたって原発の建設に関与しなければ、圧力容器や蒸気発生器といった主要な機器の生産に必要な技術を熟練層から若手に伝承できない懸念もあるからだ」(4月5日付け「日本経済新聞」)。
インフラ輸出を進めるとなるとODAの「出番」だ。原発輸出はまさにパッケージ型インフラ輸出の典型であり、ODAの使われ方を注視しなければならない。
今回訪問した中東3か国とは、原発輸出のほか、5年間で22億ドル(約2200億円)の地域安定化に向けた支援(*)、2万人規模の研修実施・専門家派遣、インフラ開発・医療協力で合意されたと外務省は報告している。原発輸出で合意したトルコに対しては、通信放送衛星事業、病院事業、海峡横断地下鉄、海峡横断道路橋等、ODAの大盤振る舞いだ。
反原発の力で原発輸出をやめさせよう。
(*)「平和構築ODA」の名のもと、ODAの軍事的活用と考えられる
(2013年5月5日)
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日本で初めてのODAを問う裁判
日本のODA(政府開発援助)によるコトパンジャン・ダム建設で、インドネシア・スマトラ島では23,000人がふるさとを強制的に奪われました。5,396人の現地住民が原状復帰と補償を求め、日本政府・JICA(国際協力機構)・東電設計(=東京電力グループ)を被告として、裁判中です。
日本政府はODAの基本理念を「開かれた国益の増進」としています。「援助」とは名ばかりです。「国益」=グローバル大企業の利益のために、地元住民を犠牲にした「海外版ムダな公共事業」を行い、さらには原発までODAを利用して輸出しようとしているのです。
「国益」のための「援助」、住民泣かせの「援助」はやめさせましょう。ぜひ、裁判にご支援お願いします。
(ダムの呼称について)
インドネシア・スマトラ島の住民・自治体・マスコミは『コトパンジャン(Kotopanjang)』と言います。
一方、日本政府・インドネシア政府は本件ダムを『コタパンジャン(Kotapanjang)』としています。
Kotoは地元ミナンカバウ語、Kotaはジャワ語でいずれも「町」を意味します。現地の言葉・文化を尊重する立場から、私達は『コトパンジャン・ダム』としています。